不勉強の私は、宮地会長(日本典礼社)から教えられ、慌ててウィキペディアを調べました。
安藤広重の東海道五十三次に原画が存在するという説です。對中如雲先生という美術研究家が一生を賭けて取り組んでいる大研究。昨年9月30日に祥伝社から司馬江漢「東海道五十三次の真実」という本を出されました。前著「サムライ・ダ・ヴィンチ司馬江漢」から、14年を掛けて命懸けの研究を深めて来られた姿が、一ページめで分かるような力作で、事実表記のひとつひとつに充分な証拠が明記されています。
歴史をくつがえす作業はとても難しいと伺っていますが、美術史に於いても、学術研究家の存在が否定され兼ねないような画期的研究成果なので、結着の付け方を著者ご自身がはっきりとは見通していらっしゃいません。
公開の場で、自説を示し、反対論者を説得することで、司馬江漢の存在を歴史に登場させたいとお考えのようです。
私は原画を2枚だけ見せて戴きました。B5版ぐらいの大きさで広重ブルーよりは少し重いブルーが印象的ですが、フェルメールやレンブラント等、オランダ美術の影響を受けているのもうなずけます。驚いたのは人物抽写。思わずルーペを所望して拡大すると、全てが極めて克明に描かれているのです。「これなら、米粒にいろは48文字を書けそうだ」。私はそう思いました。これは故宮博物館の世界です。勿論、浮世絵師なのですが、間宮林蔵・杉田玄白等と同世代で、日本地図作りに版画技術で貢献する等、いわゆる蘭学者として、長崎出島や秋田で活躍したようです。
安藤広重の作品はオランダに渡って花開きましたが、江漢作品は、矢張りオランダ・ライディーン美術館に集められているようです。
日本近世史を陰で支えた偉人にご興味を持たれた方は、是非對中如雲先生を励まして戴きたい。伊豆高原美術館閉館後、真実追究と研究成果の世界的発表に情熱を燃やす彼の生き様に、私は大いなる刺激を受け、心中協力を暫いました。