108 農学博士 矢澤一良 先生 早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所 ヘルスフード科学部門 部門長 日本脂質栄養学会 理事 日本機能性食品医用学会 理事 クリルオイル研究会 会長 イル発症の大きな起因となっていることがわかります。 「メタボ・ロコモシンドローム」の進行から始まって フレイルへと至るルートが解明されプレフレイル時点 での気づき、またその予防と改善の重要さについては、 現在、医療界を横串する研究対象ともなっています。 「栄養のバランス」がフレイル対策の要 フレイル予防には「栄養のバランス」が重要となり ます。「慢性的な低栄養」には偏食=過剰な栄養過多 も含まれます。好きなものだけを食べ続けることは栄 養学の観点からみた場合は低栄養となることを覚えて おきましょう。子ども時代の偏食や朝食を抜く習慣、 ダイエットのし過ぎなどが低栄養を招き、摂取栄養の バランスが悪くフレイルの大きな原因ともなります。 慢性的な低栄養は、筋力低下や筋肉量の減少(サルコ ペニア)を引き起こします。その結果、マイオカイン (骨格筋のサイトカイン)の減少が促進され、脳機能 の低下や脳疲労などの原因ともなっていきます。 この「精神的フレイル」と呼ばれる未病状態により、 ストレス・疲労・過労などの症状が現れて、脳機能・ 記憶力・集中力や睡眠の質の低下を引き起こし多岐に 亘る精神症状や異常行動などが誘発されていきます。 ストレスが継続し負荷されることで認知症同様、脳の 神経細胞が破壊されていくことが解明されています。 「血の巡りをよくする」ことが解決の糸口 では「フレイル・スパイラル」の悪循環から脱する ための基本的な原則はあるのでしょうか。それは低栄 養状態を改善する食習慣を常態化していくことです。 タンパク質や不足気味なミネラル、脂質をしっかりと 補充し、同時に「血の巡りをよくする栄養素」を意識 「食による予防医学・未病対策」の重要性 社会環境の激変や超高齢化課題に対応し感染症疾患、 非感染症疾患の両方に影響する身体・精神的フレイル (心身機能の虚弱)への予防と対抗策がますます急務 となっています。健康寿命を平均寿命に近づけていく 「食による予防医学・未病対策」について、右図を見 ながらフレイル発症・連鎖の仕組みを説明しましょう。 「フレイル・スパイラル」では加齢による自然発生 的な因果関係だけではなく「日常の生活習慣」もフレ 的に摂取し全身の抹消までしっかりと体温を巡らせる ことです。食べた栄養素が体内でエネルギーに変換さ れる分解酵素が活性化するために、平常体温が常に最 適な体内環境と温度を保つ役目を担っているのです。 「食品・栄養素」による医食同源への回帰 血管を柔軟にするDHAと血液をサラサラ状態にす るEPAが近年注目を集めています。血管細胞を柔軟 にし赤血球が運ぶ酸素が脳関門の通過を促すDHAと EPAは、フレイル対策の要の一つと目されています。 血液が運ぶ酸素の1/2は脳が消費します。脳を活性化 させフレイル予防に有用なオメガ3系必須脂肪酸は、 食事から摂取する必要がある脂質です。その代表格で あるDHAとEPAに最近新顔が登場しました。「南極 オキアミ」から採れる「クリルオイル」は、魚油より 乳化力に優れ素早く血中に入り機能します。抗炎症、 脳機能や高脂血症の改善、心筋梗塞の予防や肌の保湿 力向上などに関する研究成果も出始めてきています。 医療は病者への対応が主な役割・重要な問題ですが、 食品・栄養素でしかできない予防医学の在り方が近年 ますます再認識、期待される時代へとなっています。
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