61 「うまい!」の感動を五感で味わう「医食同源」の発源地 「中医学」の基本的な考え方に「自然順一」と いうものがあります。自然を考える、自然の 行いをする、いつも自然といる……。この自 然という概念には「心理」と「生理」の2つの自 然も含まれます。天体の動きや四季の温度差な どのすべてが生理的な自然と密接に関係してお り、心理は自然を深く意識します。簡潔に言えば、 生命と自然界とは常に繋がった関係にあります。 実は、「おいしさ」は舌だけで感じる味覚では ない、と言ったら皆さんはどう思われますか? 例えば「風味」は臭覚で感じます。視覚や聴覚、 触覚でも「おいしさ」を常に感じているのです。 これが「生理」と「心理」による作用なのです。 豪奢に飾られた店内、美しい器や什器で食事を する楽しさやクラシック音楽の心地よい響き、 清浄な空気や天然水で淹れたお茶やコーヒーな どを戴く瞬間の悦びは格別です。 私は、大学を卒業後に、最初に就いた仕事 は「スポーツ医学」の臨床医でした。この分野 は中国では非常に重要視され、84年の『ロサン ゼルス・オリンピック』では医師団の団長とな り、その後オリンピックの医療監督として選手 の強化にもあたりました。そのときフィジカル なトレーニングだけでなく、中医学の考え方を 取り入れた心理や生理の影響にも注目し、選手 を練習後には薬草風呂に入れ疲労回復を行い、 美しい映像が流れる部屋で音楽を聴かせるメン タル改善法を取り入れ成果を上げてきました。 『薬食同源』の考え方も、現在では「統合医学」 の見地からも発展を遂げ「生理や心理」、また 脳科学などの最新研究成果が取り入れられ進化 を始めています。私が1970年代に世界で初めて 「統合(結合)医学」を提唱したように、「どの国、 どの地域、どの民族にも固有の医療技術や医学 体系がある。その素晴らしい技術や知見をその 他の地域の医療技術などと統合して、より良い 医療や治療方法を創り出していくこと」という 理想が、実現できる時代となってきたのです。 中国の伝統的な『薬食同源』の考え方を土台 とし、最新の食文化や分子生物学、脳科学など の幅広い分野の知識や最新情報を学習しお客様 に「健康とおいしい」を提供する飛雁閣の姿勢に こそ、現代の『薬食同源』が息づいている。本国 中国から発した中国料理の種子が、銀座の地で 見事に花開いた「果実」を、私は「うまい!」と 味わった。洋の東西を超えた卓越した技と味、 新しい食文化のもてなしと流儀をそろそろ食し てみたくなってきたところです。(在上海・談) 1952年、中国・北京にて清朝宮廷侍医の家系に 生まれ、第13代祖父より「一子相伝」で宮廷医学 の伝授を受ける。北京中医学院(現北京中医薬 大学)に入学し最優秀の成績を修め卒業後、北京 医科大学(現北京大学医学部)での研修を終了 し、史上最年少の若さで同大学の教授となる。 中医学と西洋医学の双方の医師資格を取得し、 その後、「中国ナショナルスポーツチーム」主任医 師となり世界選手権などの国際大会に帯同した 後、オリンピック医療監督に就任する。 84年『、筑波国際科学技術博覧会』では「気功」 を医療技術として世界で初めて紹介、医療技術 部門金賞を受賞。その後、数々の世界的な医学 賞を受賞する。88年〜95年まで、日中文化交流で 日本医科大学の招聘により来日、同大学客員教授 として、癌、アルツハイマー、アトピー、生活習慣病 などの研究・臨床にあたり統合医療を実践する。 00年、WHOの招聘で米国研究センター主任研究 員に就任、難病治療等の研究に従事する。また、 現在は「上海新虹橋国際医学センター」にある 『九聖源中医薬研究院 中医問診部』最高顧問 として統合医学に基づ いた最先端医療と医薬 の研究開発、診療など 21世紀型の疾病、創薬、 健康指導を実施、幅広 い活動を行っている。 劉 宝崑/医学博士、元北京中医薬大学教授 上海の国際高級医療園区「新虹橋国際医学センター」。
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