63 21世紀型の『薬食同源』で健康な食習慣を味わい尽くす 『バタフライ効果』。最近よく見かけるように なった言葉ですが、その意味は「微力な動きで も時間の経過と共に大きな影響を及ぼし得る」 ことを象徴的に表しています。この説を唱えた のはMITの気象学者であるローレンツ博士です。 博士のこの説に端を発し「カオス理論」という、 後に「複雑系」と称される科学界のみならず、人 文社会学界にまで広範囲な影響を及ぼした大変 革を促す礎を築いた標語的な用語です。 では、いったいいつ頃に東西の医学が出会い、 現在のような複雑系の医科学へと発展を遂げて きたのでしょうか。ここからは歴史的な時空を 超えた進化の物語をご紹介します。 1692年、清朝の第4代皇帝・康熙帝が悪性の 高熱を発して病に伏しました。御典医が何人も 集まって様々な治療を試みたのですが、一向に 回復の兆しがみられないのです。ちょうどその ときイタリアからイエズス会の修道士が朝廷に 表敬訪問に来ており、その中の一人が西洋医学 の知識と技術を身につけていました。彼が持参 してきた新薬キニーネというマラリアの特効薬 を皇帝に投与したところ、一気に病状が快復へ と向かいました。そのことが契機となり劉博士 の曽祖父の代になって初めてヨーロッパ(現在 のドイツ)へと本格的に西洋医学を学ぶために 留学を命じられます。これが、中国伝統医学と 西洋医学がはじめて出会い、未来で統合されて いく機会を創った歴史的瞬間の逸話です。 コロナ禍の直前に出版された世界的なベスト セラー本『食のパラドクス』を翻訳された白澤 卓二博士が、訳者あとがきで次のような解説を されており、ここにご紹介させていただきます。 「ガンドリー博士(著者)は元々心臓外科医だ が、多くの患者がヘルシーフードを食べ続けた にもかかわらず、心臓の冠状動脈に動脈硬化病 変を作ったことに基本的な疑問を持ったのが本 書を執筆するきっかけになった」。(中略) 「健康的な食生活を送っているにもかかわら ず、関節炎、胃酸過多、骨粗しょう症、うつ病、 甲状腺機能低下症などの病気を併発(中略)な ぜ、自己免疫疾患のような不都合が起きるよう になったのだろうか」。著者が発見した病因と 食生活の改善策でこれらの患者が発症した様々 な症状が改善していった方法までを、具体的に 紹介されています。また、白澤博士はこれらの 指導法をご自身でも実践されています。 『医道通神』という言葉が中医学の哲理の中 にはあります。これは、医師という職業は全知 全能の神のごとく絶えず種々様々な事象や事柄 に通暁していくように勉学を続けていかなけれ ばならないない、という戒めの教えです。例え いかなる病変が起きても、感染症が発生しても、 医師という職業をまっとうして「治病救人」を 叶え「医徳高尚」を守っていく……。 現代の病気の原因の多くが「食生活」にある ことがわかってきた今、「薬食同源」が、その 一つの目標となり、最新の医科学の成果も学び 実践していくことで「健康とおいしい」の両方 を手(口)に入れることができる幸福な時代に いることを、私たちは歓ぶときでもあります。 前述の著書の中で白澤博士は、私たちに食が 腸を狂わせ自己免疫疾患のような不都合な症状 を起こしていくことへの警鐘と、その改善策を 具体的に解説されています。『6週間で体がよ みがえる食事法』は、その一つの手引書です。 本書には新種の感染症やインフルエンザなど にも打ち克つための情報を集め掲載しています。 不安に苛まれる生活を一変させるキーワードは、 身近な食生活を見直すことにあることを理解し、 実際の生活習慣の中で活かしてみましょう。 科学と文化を芸術に昇華させた複雑系の環境 の中で「おいしいと健康」が同源である料理を 提供し続けて10年余、飛雁閣のバタフライは皆 様をいつもの笑顔でお待ちしております。 R 『食 のパ ラ ドク ス 』( 発 行・翔 泳 社) 著 者・ステ ィーブン・ ・ガンドリ ー 訳者・白 澤 卓二 「食 」 に関 する世 界的 な 名 著です 。
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