Art Line「出会い」

飛雁閣とアート作品との出会い

「永遠の生命」を生き続けるアート作品たち……。
飛雁閣コレクションの「由縁」にまつわる数々の逸話と
それぞれの作品の生い立ちをご紹介していきます。

「永遠の生命」を生き続ける
アート作品たち……。
飛雁閣コレクションの「由縁」にまつわる
数々の逸話と
それぞれの作品の生い立ちを
ご紹介していきます。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」①

こんな稼業をしながらアートを飾っているのは、「永遠の寿命をもつ文化」に囲まれる空間でお客様を迎えた方が、さらに気分よくご会食の時間をお過ごし戴けるだろうという、勝手な思い込みが原点です。
2008年9月、開店当初にあったアート作品は今はほとんど残っていません。スタート時にはパラゴンもありませんでした。現在のマリー・ローランサンの位置には『MEISSEN』のアラビアンナイトの大陶板が掛かっていました。今では自宅に持ち帰っていますが、お手元のメニューの表紙画像として永遠に使われることでしょう。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」②

2022年8月、縁があって「MEISSEN日本総代理店GKジャパン」の社長にご来店を戴く機会に恵まれましたが、私のMEISSEN所有はB4サイズのアラビアンナイト陶板で始まりました。少し余裕が出て日本の陶器・絵画を集め始めた頃、西武百貨店の展示会に招かれ、嫌々行ったのがキッカケでした。勿論、飾ってみると矢張り絵画より落ち着くので、日本のアートは視界から外れ、少しずつ増えていったのです。
西武百貨店はMEISSENに、たいへん力を入れていて毎年2度展示会を開きますが、最も印象に残っているのは、ある時50メートルも先に陳列されていたコバルトブルーのカップ&ソーサー一式を発見したことです。これには値段交渉も忘れ購入してしまい、現在は東京オフィスの応接間にあります。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」③

飛雁閣のMEISSENは、何と言っても『猿の楽隊』です。
オリジナルの23体(連番)を所有するのは奇跡に近いことです。実は、ガラスを外して掃除したときに、1体を落してしまい、笛が折れてしまったのです。誰かがアロンアルファで見事に接着して元通りに飾りましたが、これでこのコレクション価値は1/3になったと覚悟しました。それでも私は売るつもりもないので元箱さえ捨ててしまっています。この場合、金継ぎよりも、この処置の方が理に叶っていると判断しています。
「傷物」になってしまったので、私はまったく無関係の4体を探して勝手に楽隊に編入してしまいました。全27体のモンキー奏者(1体は譜面台)がいるのは、このような理由からです。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」④

絵画は、基本的に日動画廊の社長・副社長にお世話になっています。数年前、店頭でダリの『曲った時計』のオブジェを見つけ、買おうと思ったのですが、なぜか決断できなかったことが残念でしかたありません。
藤田嗣治氏の小品が最近人気とのことで、社長が見えるたびに、
「これを選んで良かったね。近年値打ちが高騰しているから売らないように」と、仰います。確かにホールを支配していたMEISSEN大陶板の替わりにM.ローランサンを入れたとき、店内の雰囲気が一転し、柔らかくなりました。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」⑤

2022年9月、2枚目のM.ローランサンが入りました。彼女の得意とした花のモチーフで1940年頃の作。なんとサザビーズ、クリスティーズの2軒で落札記録がある作品です。右側がグレー調ですが、グリーンがテーマ色となっています。パラゴン上の小姓の絵より落ち着いた雰囲気です。とりあえず、萩須高徳氏のパリ風景は個室廊下入り口に移しました。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」⑥

元々ここに掛かっていたクレパス画はハインリッヒ・ヴェルナー氏の作品。1970年代にMEISSENのチーフとして「アラビアンナイト・シリーズ」を企画して、大成功させた彼は「札幌MEISSEN美術館」の名誉館長を務めた親日家です。同じく並外れた親日家であったウィーンフィルの第一チェリスト、フリッツ・ドレシャル氏と共に、私たちの記憶の奥に刻まれています。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」⑦

その真正面には珍しい立体陶板が額装されています。これも「アラビアンナイト」。いわゆる珍品で、見つけたときは嬉しかったものです。奥の付きあたりには格調を破った現代アート。1980年代に、横浜・桜木町の東急電鉄終点の壁に飽きもせず"ストリートペイント"を描き続けたロコ・サトシ氏の作品。極めて親しいF氏が、ロコ氏の友人で、「彼の作品を大量に所有しているから、どこかに掛けて欲しい」と大量に持ち込んできたのです。私は丁重に礼を言って5枚だけ預り、日動画廊に額装を依頼して、飛雁閣に1枚、弊社東京事務所に2枚を掛け、2枚を所蔵しています。逮捕寸前だったストリートペインターも、成長してその存在を国際化させ、今では横浜市の仕事をするなど有名ペインターになりました。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」⑧

ここで最もプレシャスな作品についてお話ししなければなりません。
たしかアムステルダムでの日曜日、朝の「蚤の市」で知り合ったアンティーク屋さん。あらためて店を訪れるとラリックやバカラに混じり、『ドーム(DAUM)の花瓶』を見つけました。10万ユーロを超えるとカード会社との与信交渉が相当大変です。しかし、アールデコには珍しく柔らかなグリーンに魅せられて、個室に隠れるように置かれている日本製のガラス細工に収めた写真もご披露しておきましょう。タオルを巻き、抱いて帰国しました。私はガレの成熟度より発展途上のドームを愛します。現在の手持ち美術作品でどれかひとつを、と問われたら、迷わず選ぶのがこの作品です。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」⑨

もし2番目は? と訪ねられたら、ヴェネツィアで2時間ちかくも、押したり引いたり「ベニスの商人」と壮絶なネゴを展開した『魚のオブジェ』を挙げます。「福の間」に置いています。署名入りの現代物ですが、色の活かし方が独特です。当時、私は「織部」に興味をもっていたのですが、この作品は、ガラス工芸品への目を開いてくれました。当然、バスタオルで包んで帰ってきました。

銀座 飛雁閣『Salon de Higankaku“News & Olds”』Art Line「出会い」⑩