中国料理の皇帝フカヒレの真の実力
中国料理の皇帝
フカヒレの真の実力
「極上のフカヒレ」料理を、食すことができる奇跡!
かつて中国の皇帝や貴賓たちが愛してやまなかった美味
フカヒレ料理の伝統から「料理人の超絶技」が見えてきます。
「極上のフカヒレ」料理を、
食すことができる奇跡!
かつて中国の皇帝や貴賓たちが
愛してやまなかった美味
フカヒレ料理の伝統から
「料理人の超絶技」が見えてきます。
今はむかし、時代は清朝最盛期をつくったと言われる乾隆帝の時代、中国料理の「皇帝」とまで称された逸品が「フカヒレ」料理でした。少し話は横道にそれますが、この乾隆帝時代の中国は、近世世界史の中でも際立った「強大な治世」と「独自の文化」をつくったことでも世界に名を馳せています。現在、「WOWOW」などでも超人気な中国歴史ドラマとなっている『瓔珞(エイラク)』は、乾隆帝の皇后となる女性の半生を描いたものですが、このドラマには、料理、医術、服飾、書画など中国の国宝(故宮博物館に収容された宝物)級の文化・芸術作品が数多く生み出された時代であったことが、この女官から皇后にまで上りつめた女性のストーリーと相まって紹介されています。一度、ご覧になると病みつきになるほど「知的好奇心も満腹」になること請け合いです!
さて、話題を「フカヒレ」に戻しましょう。乾隆帝時代に大流行したフカヒレの原産地は、現在と同様に隣接するベトナムなど広く東南アジア諸国から入ってきたようですが、実は「フカヒレ」は、江戸時代の清貿易で日本から輸出されたものが「最上級品」として珍重され、その歴史と伝統は今でも引き継がれ続いています。
乾隆帝と同時代を生きた清代の大詩人・袁枚(えんばい)は、ブリア・サラヴァンの大著作『美味礼賛』と東西の双璧を為すグルメ本『随園食単』の中で、「フカヒレは柔らかくなり難いことから2日間煮込んでようやく柔らかくなる。その後、火腿(中国ハム)や鶏のスープに新鮮なタケノコと小さじ1杯の氷砂糖を加え、柔らかくなるまで煮込む」と記しています。この記述からも、当時にはすでに「フカヒレは乾物」として広く中国国内で流通していたことがわかります。
現政権となって「贅沢禁止令」が発布されて以来、中国本土ではなかなか食することができなくなった「垂涎の逸品」となりました。また一方では、「絶滅危惧種」として多くのサメの種類が「漁獲禁止」指定となっていることもあって、年々、漁獲量は激減しているという今日的な事情もあります。これらの現実を想うと「最高級のフカヒレ」料理を食することができる私たちの「口福」に感謝する気持ちと共に、「幸せを味わい尽くす」ことへの歓びを感じずにはいられませんね。
現在、世界には約400種類ほどのサメがいると言われていますが、フカヒレとして使用されるものは20種類ほどとなります。その代表格がヨシキリザメ、アオザメ、モウカザメなどとなり、宮城県・気仙沼がその1/2の漁獲量を占めています。ちなみに日本ではマグロの延縄(はえなわ)漁で引っかかって獲れたサメを利用してフカヒレを製造していることを付記しておきましょう。
フカヒレは、たんぱく質、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンB12などの栄養素が豊富な食材です。フカヒレを漢字にすると「鱶鰭」と書きますが、「魚」偏に「養」と「嗜」となり、最高級料理へと変化(へんげ)していくことが古よりわかっていたことが窺えます。
女性が選ぶ「美容に一番良いと思う成分」ではダントツ1位となった「コラーゲン」が豊富に含まれていることが、軟骨魚類である「サメ(別称:フカ、ワニ)」の最大特長でもあるのです。その上、皆さんもよく聞かれたことがある「コンドロイチン」も含有された健康食品のゴールドメダリストなのです。
美肌効果があり、滋養強壮や骨の強化、腰痛やリウマチの緩和などに効果があると言われるムコ多糖類「コンドロイチン硫酸」は、人体に必要不可欠な成分です。加齢とともにドンドン失われていく皮膚の水分、真皮の約70%はコラーゲン繊維で出来ています。その細胞と細胞の間にあって細胞同士をつなぎ合う役割を担っているのが「コンドロイチン」だと言われているのです。
フカヒレは、無味・無臭の食材です。では、どうして「あんなに美味なの?」と疑問をもたれた方に、フカヒレ料理の「真の実力」のお話をご紹介しましょう。
フカヒレ料理の最高峰は「姿煮」です。あの食感の妙味はフカヒレ本来の「ゼラチン質」の成せる技ですが、では「あの味は?」。たっぷりと注がれた「ソース」が、美味の決め手です。調理加熱しても溶けないコラーゲンは、唯一、フカヒレに含まれているのです。
上湯(出汁)づくりは、鶏・豚・干し海鮮・ネギ・サトウキビなどを独自製法の軟水に入れ、丁寧に加熱しながら煮込みます。飛雁閣の上湯の決め手は「火腿」。化学調味料などを一切使用しない食材のみから醸し出される絶妙な天然ハーモニー、爽やかでトロミ感のある「ソース」は、このように丹精を込めた手間の連続から出来上がっていきます。
「原ピレ」から丹念に磨き上げられたフカヒレと、繊細で精緻な料理人の感性と技から生まれる「ソース」とのコラボレーション作品となって『自家仕立てフカヒレ姿煮』は、皆さんの元へと運ばれていきます。このコラムを書きながらも「ヨダレ」が滴るほど一度食したらば「皇帝」気分に浸れる絶品料理は、こうして出来上がっていくのです。
*参考資料: | 2019年度、農林水産省・水産庁・総務省・FAO(国際連合食料農業機関)公表の諸データ、文献より抜粋 |
*参考資料: | 環境省・生物多様性センター『いきものログ』 |
*参考資料: | 気仙沼観光協会『美味しいフカヒレ料理情報』 |
*参考資料: | 中国語スクリプト『中国の食文化』 |