初春の祝いの席には真紅の姿がよく似合う
初春の祝いの席には
真紅の姿がよく似合う
この国に生まれてよかった! と気づいた瞬間の口福は
嬉しさと慶びが歓喜の渦となってカラダの隅々にまで幸せを運びます。
その強面のうちに隠された「縁起物」の姿を探ってみました。
この国に生まれてよかった! と
気づいた瞬間の口福は
嬉しさと慶びが歓喜の渦となって
カラダの隅々にまで幸せを運びます。
その強面のうちに隠された
「縁起物」の姿を探ってみました。
祝い事の宴席には欠かすことができない逸品と言えば「伊勢海老」に尽きる、といっても過言ではないでしょう。いまでは日本人に一番人気の食材となった「えび」の王様。晩秋から初春にかけてが最も身も肥え旨味も増すことから「新年の時期」に一番の食べごろを迎えます。
縄文時代には、すでにえびを獲り食していた様子がわかっていますが、書物に登場するのは、奈良時代の『出雲風土記』が初出のようです。その後、室町時代以降は武家の婚礼の宴には欠かせない一品となっていたほど、日本人の食文化の頂点を極めて以来長い歴史がある「純正天然日本産」の超高級食材です。
現在では「伊勢海老」と呼ばれていますが、その名前の由来にもいろいろな説があり、今の「伊勢海老ブランド」に落ち着くまでには、長い歴史と物語があったようです。
京都には、伊勢から届くことから「伊勢海老」、江戸へは、鎌倉から届くので「鎌倉海老」。尾張では、志摩から届くので「志摩海老」など様々な呼び名があり、時代の変遷とその時々の権力や市場原理などにより「ブランド名」も右往左往していたことがうかがえます。
また、産地由来説のほかにも、浅瀬の岩場(磯)に生息していることから「いそ海老」、や外見から「威勢がいい海老」が短縮され「いせ海老」となったなど、高級ブランドらしい命名の変遷ストーリーには、今も昔も変わらない世相が見てとれます。
ところで、伊勢海老は『賀寿饗宴(ガジュキョウエン)』の逸品であると言われてきた理由を少しご紹介しましょう。江戸時代には大いに吹聴されて、豊かになった一般人の口にも入るようになった「縁起物」として珍重されるようになりました。その伝統と慣習は現代へと受け継がれ、その謂われがとても日本的なところが「伊勢海老」のもう一つの特長でもあります。
「鎧兜」つけた勇猛な武将を思わせる壮麗な姿形から、正月の松飾りや祝儀の飾りとしても利用されてきました。また、ヒゲが長く立派になるまで腰が曲がるまでという想いから健康長寿を祝う宴席では床の間の装飾として、酒宴客にもてなされる肴としても供され、目出度い祝いの象徴物として食べ物以外の目的にもいろいろと使われてきました。
また日本では、エビを表す漢字が2通りあり、しっかりとその使い分けが決まっています。「海老」は、大型で海の中を歩きまわるタイプに使用します。一方、クルマエビのように小型で泳ぎまわるタイプには「蝦」の字を当てるのが正しい使用方法ということです。
英語では、大きい方からLobster → Prawn → Shrimp と決まっているので、海外旅行に行かれたときには、呼び名や表記には気をつけて目的のエビを味わってみてください。
伊勢海老(を食すること)が健康長寿の象徴、ということが科学の目で明らかになったのは現代になってからですが、その成分には目を見張るものがあります。
老化防止作用や抹消血管を拡張し血行をよくすることから「若返りビタミン」と言われるビタミンE が豊富に摂れる食材です。その他にも、成長ホルモンの分泌促進や疲労回復によいとされるアルギニン、強い抗酸化力があるアスタキサンチン、肝機能の向上によいと言われるタウリン。また、赤血球や骨の形成を助けるミネラル分の銅も十分な量が含有されています。
そのうえ、現在ではまだ「伊勢海老」の完全養殖ができないことから、皆さんの口に入る伊勢海老は「完全天然モノ」ということで、嘘、偽りがまったくない天然食材となります。
日本では約20種類ほどのえびが食用として流通しています。その頂点に君臨する伊勢海老を食すときには余すことなく戴きたいものです。肉質部分を食べ終わったら、是非とも頭と殻をスープにして召しあがってください。最高の食材は二度目も美味を味わせてくれる優れものです。
*参考資料: | 『UMITO』MARUHA NICHIRO |
*参考資料: | 『グルメクラブ』NIKKEI STYLE |
*参考資料: | 東邦大学医療センター大橋病院栄養部 |
*参考資料: | 食品データ館 |